機器のノイズ対策(EMC 対策)の基本と、対策部品ごとの違いを解説します。

EMC とは

EMC(電磁両立性)は、機器が周りにノイズを出しすぎず(エミッション)、周りからのノイズで誤作動しない(イミュニティ)ことを表す考え方です。多くの機器では、製品として出荷する前に、規格に沿った EMC 試験で確認します。

エミッション(EMI)機器が出すノイズを、決められた値以下に抑えること
イミュニティ(EMS)静電気、電波、雷サージなど、外からのノイズを受けても正しく動き続けること

ノイズの伝わり方

ノイズは、ケーブルを伝わる伝導ノイズと、空間に広がる放射ノイズに分けられます。機器の筐体をシールドしていても、つながっているケーブルがアンテナとなって、ノイズを出したり受けたりします。そのため、ケーブルの出入り口であるコネクター部分は、対策の重要な場所です。

おもな規格

VCCI日本の情報技術装置のエミッションの自主規制
CISPR 32マルチメディア機器のエミッションの国際規格
IEC 61000-4 シリーズイミュニティ試験の国際規格(静電気放電、放射電磁界、ファストトランジェント、サージなど)
IEC 60601-1-2医用電気機器の EMC の国際規格
MIL-STD-461米国の防衛装備品の EMC の規格

※どの規格が必要かは、機器の種類や出荷先によって異なります。

対策の考え方

ノイズ対策は、大きく3つの方向から考えます。

  1. 発生源で抑える:回路や基板の設計で、ノイズそのものを小さくする
  2. 伝わる経路を断つ:フィルター、シールド、接地(グランド)で、ノイズの通り道をふさぐ
  3. 受ける側を強くする:誤作動しにくい回路やソフトウェアにする

設計の段階なら、発生源で抑えるのが最も効果的です。一方、試験で問題が見つかった後や量産の直前では、設計を変えずに済む「経路を断つ」対策が現実的です。

対策部品の比較

ケーブルとコネクターまわりで使われる、代表的な対策部品を比べます。

フェライトコア基板上のフィルターコネクター挿入型フィルター
取り付け方ケーブルに取り付ける基板に部品を実装するコネクターの間に挟む
設計変更不要必要(基板の作り直し)不要
信号ごとの調整できない(ケーブル全体に効く)できるできる(ピンごとに容量を選ぶ)
大きさ・重さケーブルに重さが加わる基板上の面積が必要薄く軽い
向いている場面手軽な対策、効果の確認新規設計設計後の対策、省スペース・軽量が求められる機器

μ-Disc Flex Filter は、コネクター挿入型フィルターです。

コンデンサーでノイズを逃がす仕組み

コネクター挿入型フィルターの多くは、各信号ピンと FG(フレームグランド)の間にコンデンサーを入れています。コンデンサーは周波数が高いほど電流を通しやすいため、信号よりも周波数の高いノイズだけを FG へ逃がします(ローパスフィルター)。

容量が大きいほどノイズを逃がす効果は強くなりますが、大きすぎると必要な信号まで弱めたり、波形を鈍らせたりします。信号の周波数や通信速度に合わせて、ピンごとに容量を選ぶことが大切です。雷サージや静電気への対策には、ツェナーダイオードやバリスタを組み合わせます。

対策を進めるときのポイント

  • 問題の周波数を把握する:EMC 試験の結果から、どの周波数帯が基準を超えているかを確認します。
  • ノイズの出入り口を特定する:ケーブルを1本ずつ外したり、仮にフェライトコアを付けたりして、どのケーブルが原因かを絞り込みます。
  • 効果を確かめてから決める:取り外しの簡単な部品で効果を確認してから、最終的な対策を決めます。

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